
短編集『ハート・ランプ』で2025年の国際ブッカー賞を受賞した著者のバヌ・ムシュタク(右)と訳者のディーパ・バスティ(左) Photo: Kate Green / Getty Images
Text by Pragati K.B.
インド人の作家バヌ・ムシュタクの『ハート・ランプ』(未邦訳)が、国際ブッカー賞の受賞作では初の短編集となった。インド南部の言語であるカンナダ語から翻訳された作品としても初の同賞受賞になる。
だが、『ハート・ランプ』は、別の理由でも異例だ。すでに出版された本の翻訳書ではないのだ。ムシュタクがこの30年のあいだに著し、カンナダ語誌に掲載された60を超える短篇全作のなかから、翻訳者のディーパ・バスティが選集して、この本ができたのである。
こうした協働の甲斐あって、英訳小説の分野では世界で最も権威ある賞をふたりの女性が勝ちとった──。これは、訳者であるバスティの並外れたエンパワーメントが、著者と訳者の関係性のなかで発揮されたことを意味している。
また、インドで文学翻訳が進化しており、同国内の多言語で書かれた作品が英訳される数が増えていることも示している。こうして、インドからの声が新たな読者に届き、英語という言語を豊かにしているのだ。
ムシュタクは電話取材に応えてこう語る。
「私自身、あらゆる類いの固定観念を打破してきました。そしていま、私の本もあらゆる固定観念を打ち破っているのです」
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「生半可にしか英語に移し替えられない」
ムシュタクは電話取材に応えてこう語る。
「私自身、あらゆる類いの固定観念を打破してきました。そしていま、私の本もあらゆる固定観念を打ち破っているのです」
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Translation by Yuki Fukaya
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